事業責任者のためのビジネスTips
「Enable Guide」掲載中

THE MODELに潜む落とし穴:分業制の縦割り化による機能不全

現代のマーケティングおよび営業戦略として、THE MODELは多くの企業で採用されています。マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスという4つのフェーズに分けて、それぞれの部門が連携して顧客を育成し、ビジネスの成長を促すことを目的としています。しかし、このアプローチには思わぬ落とし穴があります。それは、分業制が「縦割り」になってしまい、各フェーズが孤立して機能不全に陥ることです。なぜこのような問題が起こりやすいのか、そしてどのように対応すべきかについて考えていきましょう。

THE MODELの問題仮説:縦割り組織の弊害

THE MODELは、各部門が専門性を持ち、効率的に役割を遂行することを前提としています。しかし、各フェーズにおいて部門間のコミュニケーションや情報共有が不十分になると、次のような問題が発生するリスクが高まります。

  • 顧客情報の断絶:マーケティングから営業、営業からカスタマーサクセスへと引き継がれるべき顧客情報が、部門間で十分に共有されないことで、顧客理解が浅くなり、対応が不十分になることがあります。
  • 目標の乖離:各部門が自部門の目標達成にのみ集中することで、最終的なビジネスゴールである「顧客価値の最大化」を見失う可能性があります。例えば、マーケティング部門はリード獲得数を重視し、営業部門は契約件数を最優先するなど、ゴールが一致しない場合がよく見られます。
  • 顧客体験の断片化:各フェーズごとに対応が分かれてしまい、一貫性のある顧客体験が提供できなくなると、顧客の信頼を損ない、長期的な関係構築が難しくなります。

問題への対応ステップ:連携を強化するための施策

THE MODELがうまく機能しない原因の一つは、部門間の連携が十分に取れていないことです。この問題を解決するためには、次のような施策を講じることが有効です。

1. 部門横断的なKPIの設定

部門ごとのKPIだけでなく、全社的なKPIを設定することで、部門間の連携を促進します。例えば、リード獲得から顧客満足度までを追跡する一貫したKPIを設けることで、各フェーズが顧客価値の最大化に集中することができます。

2. 情報共有の仕組み強化

顧客情報の断絶を防ぐためには、CRM(顧客管理システム)や共有ドキュメントを活用し、リアルタイムで情報が更新・共有される仕組みを整えることが重要です。また、定期的なミーティングを通じて、各部門間でのコミュニケーションを促進します。

3. 部門間トレーニングの実施

部門ごとに異なる業務や課題を理解するためのトレーニングを行い、各フェーズが互いの役割を理解できる環境を作りましょう。これにより、部門間の理解と協力が深まり、顧客対応の一貫性が向上します。

成功事例:連携強化で成果を出した企業

あるB2B企業では、THE MODELを導入した際に初期段階で縦割り化の問題に直面しました。そこで、全社的なKPIを「顧客ライフタイムバリュー(CLTV)の最大化」に設定し、部門横断的な目標を共有しました。また、月次ミーティングを導入し、各部門が顧客に対する対応状況を共有する場を設けたところ、顧客満足度が向上し、最終的に売上が30%増加する結果を得ることができました。

THE MODELを最大限に活用するために

THE MODELは、適切に運用されれば大きな成果を上げることができるフレームワークです。しかし、分業制が縦割り化してしまうと、そのメリットは失われ、むしろ逆効果となることがあります。部門間の連携を強化し、全社的な視点で顧客対応を行うことで、THE MODELの効果を最大限に引き出すことが可能です。これからのマーケティング戦略には、部門間の協力を重視した柔軟なアプローチが不可欠です。

おすすめの記事

TOP