営業組織をゼロから立ち上げる手順|営業の型がない組織の5ステップ

営業組織をゼロから立ち上げるときは、人を採る前に「この組織にとって営業とは何か」を再定義し、商談の型と会議体をつくることから始める。 技術力はあるのに営業の型を持たない組織が、いきなり営業経験者を採用したり、SFAを導入したりしても、営業は根付かない。順番は、①役割の再定義、②ロードマップ、③3つの営業インフラ、④オンボーディング、⑤自走の仕組み化、の5ステップである。

本記事は、次のような組織を想定している。

  • 受託開発やグループ内向けの業務が中心で、自ら顧客に提案した経験が少ない
  • 自社プロダクトや新サービスを外販したいが、営業の型も会議体もない
  • 大手企業の子会社・新規事業部門として、営業とマーケティングの機能を一から整える必要がある

なぜ「営業の型がない組織」の立ち上げは難しいのか

難しさの中心は、スキル不足ではなく役割の認識にある。受託やグループ内取引が中心だった組織では、顧客から依頼が来てから動くことが当たり前になっている。この状態で「提案してきてほしい」と求めても、何を・いつ・誰に提案すべきかの判断基準がないため、担当者は動けない。

もう1つの難しさは、最初から分業組織をつくろうとすることである。インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスを最初に分けると、型ができる前に引き継ぎのルールだけが増える。立ち上げ期は、少人数で商談の最初から最後までを経験し、売れる型を言葉にすることを優先する。

営業組織の立ち上げは、どんな順番で進めればよいか

ステップ期間の目安やること終わりの状態
1. 営業の役割を再定義する1ヶ月「営業=受注をとる人」ではなく、「自社と顧客を結び、価値をつくる役割」と言葉にする。対象顧客と提供価値を絞る経営と現場が同じ言葉で営業の役割を説明できる
2. 立ち上げロードマップを引く2〜4週間重点顧客、KPI、体制、開発メンバーの関わり方、月ごとの到達点を決める何を・いつまでに・誰がやるかが1枚にまとまる
3. 3つの営業インフラを整える2〜3ヶ月商談の型(フェーズと完了条件)、営業管理の仕組み(まずは既存ツールで十分)、会議体(案件レビューと振り返り)をつくる毎週の会議で案件が前に進み、判断が記録される
4. オンボーディングを設計する6週間程度新しく営業を担う人が、型・顧客・提案資料を使って独り立ちするまでの学習と実践の流れをつくる2人目・3人目が同じ型で立ち上がる
5. 自走の仕組みに組み込む継続会議の進行、商談レビュー、KPIの見直しを現場のリーダーが担う。スキルの到達度を定期的に可視化する外部の支援がなくても、型が更新され続ける

ステップ3の営業管理の仕組みは、専用のSFAから始めなくてよい。型が固まる前に高機能なツールを入れると、入力項目が現場の判断と合わずに使われなくなる。社内で使い慣れたグループウェアや表計算ツールで始め、型が固まってから移行するほうが定着しやすい。

実際の立ち上げではどうなったか(ANAシステムズの事例)

ANAシステムズ株式会社 バリュークリエーション推進部では、グループ内事業会社に対して受け身になりがちな構造から、プロアクティブに提案する「アカウント営業機能」を立ち上げた。Enable Partnersは8ヶ月のプロジェクトとして、次のように支援した。

  • 役割の再定義: 「営業」を「自社と顧客を結ぶ橋渡し役・価値創出」と定義し直し、アカウントマネジメントへ考え方を切り替えた
  • 3つの営業インフラ: 立ち上げロードマップ、Google Workspaceを活用した営業管理ツール、フロント会議体を整えた
  • オンボーディング: 新たに営業を担うメンバー向けに6週間のオンボーディングプログラムを構築した
  • 可視化: 独自のスコアリングで、組織の営業成熟度と個人のスキル獲得レベルを数値で確認できるようにした

その結果、会議体・KPI・商談の型が現場主導で回り始め、現場のチーフ自身が会議を進行する状態になった。詳細はANAシステムズ株式会社の営業組織立ち上げ支援に関するお知らせに掲載している。

同じ進め方は、社内情報システム部門、製造業の技術営業組織、グループ会社の新規事業部門など、技術力はあるが営業の型を持たない組織に広く当てはまる。

営業とマーケティングを同時に立ち上げるときの注意点は

新規事業で営業とマーケティングを一度に立ち上げる場合は、リードの定義と引き渡しの条件を最初に決めることが重要である。ここが曖昧なまま両方を走らせると、「リードの質が悪い」「フォローが遅い」という対立が早い段階で生まれる。

立ち上げ期は次の3点を先に決めておくとよい。

  1. どんな状態の見込み顧客を営業に渡すか(リードの定義)
  2. 営業は何日以内に、何をして、結果をどう返すか(引き渡しの約束)
  3. 受注・失注の理由を、誰がいつ振り返るか(振り返りの場)

営業とマーケティングの分業がうまくいかない構造は、The Modelに潜む落とし穴で詳しく解説している。

外部の支援会社には、何を任せるべきか

立ち上げ期に外部の支援会社を使うこと自体は合理的である。ただし、営業活動そのものを外に出すと、型が社内に残らない。任せるべきなのは、型をつくるプロセスの設計と、社内メンバーがそのプロセスを回せるようになるまでの支援である。営業代行・営業コンサルティング・営業研修・セールスイネーブルメント支援の違いは、営業支援の4類型の違いで整理している。

よくある質問

営業組織の立ち上げには、どのくらいの期間がかかりますか?

役割の再定義から自走の仕組み化までで、半年から1年が目安です。Enable Partnersが支援したANAシステムズの事例では、8ヶ月のプロジェクトでアカウント営業機能を立ち上げ、6週間のオンボーディングプログラムを構築しました。

最初に営業経験者を採用すべきですか?

採用の前に、営業の役割と商談の型を言葉にすることをお勧めします。型がない状態で経験者を採用すると、前職のやり方が持ち込まれ、組織に合った型が育ちにくくなります。社内メンバーと型をつくり、型を前提に採用要件を決めると定着しやすくなります。

SFAは最初から導入すべきですか?

最初から専用のSFAを導入する必要はありません。商談フェーズや完了条件が決まる前に高機能なツールを入れると、入力されずに放置されがちです。使い慣れたグループウェアや表計算ツールで始め、型が固まってから移行する進め方が定着しやすいです。

開発メンバーは営業にどう関わればよいですか?

技術系の組織では、開発メンバーが商談に同席して顧客課題を直接聞くことが大きな強みになります。ただし稼働の上限を最初に決めておかないと、開発が止まります。ロードマップの段階で、開発メンバーが営業に割く時間と役割を明確にしてください。

Enable Partnersについて

Enable Partners合同会社は、神奈川県横浜市に拠点を置く、事業推進リーダーを育成し組織変革を実現するEnablement Company(イネーブルメント企業)です。コンサルティング会社でも研修会社でもなく、企業の実際の事業課題を題材に、事業を前に進められる人材を組織の内側に育てます。

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